『マインドセット』とは
「人がどんな人間になれるかを決めるのは、生まれ持った才能そのものではなく、それをどう捉えるかという“考え方”である」
皆さんは、新しい挑戦をする時、「自分の能力はどうせ変わらない」と感じてしまうことはありませんか。今回ご紹介する『マインドセット「やればできる!」の研究』は、スタンフォード大学の心理学者キャロル・S・ドゥエック氏が、長年の研究をもとに「人の能力や成功を左右するのは、才能そのものよりも“考え方”である」ということを明らかにした一冊です。
ビジネス書としてはもちろん、教育・子育て・スポーツの現場でも広く参照される、心理学分野の名著として知られています。原著の刊行から20年近く経った今も版を重ね続けているのは、それだけこの考え方が時代や立場を問わず通用する普遍性を持っているからだと思います。
「硬直マインドセット」と「しなやかマインドセット」
「硬直マインドセットの人は、自分の能力を証明し続けなければならないと感じる。しなやかマインドセットの人は、能力は努力によって伸ばせると信じている」
本書の中心にあるのが、人の考え方を2つに分類する視点です。一つは「硬直マインドセット」。能力や才能は生まれつき決まっていて変わらないと考える姿勢で、失敗を「自分の限界の証明」と捉えてしまいがちです。もう一つは「しなやかマインドセット」。能力は努力や経験によって伸ばせると考える姿勢で、失敗を「成長の過程」として前向きに受け止められます。
例えば、仕事で大きな失敗をした時。硬直マインドセットの人は「自分には向いていなかったんだ」と挑戦そのものを諦めてしまいがちですが、しなやかマインドセットの人は「今回のやり方のどこが悪かったのか」を検証し、次への糧にしようとします。ドゥエック氏の研究によれば、同じ才能を持っていても、この2つのマインドセットの違いによって、その後の成長やパフォーマンスに大きな差が生まれることが分かっています。
「褒め方」ひとつで結果が変わる、衝撃の実験
「頭の良さを褒められた子どもたちは、挑戦を避けるようになった」
本書で特に印象的なのが、ドゥエック氏が行った小学5年生を対象にした実験です。簡単なパズルを解かせた後、一方のグループには「頭がいいね」と能力を褒め、もう一方のグループには「よく頑張ったね」と努力を褒めました。その後、難しいパズルに挑戦するか、簡単なパズルを続けるかを選ばせたところ、能力を褒められた子どもたちの多くは簡単な方を選び、努力を褒められた子どもたちの大半は難しい方に挑戦したのです。
能力を褒められた子どもは「失敗すると、せっかくの“頭の良さ”という評価が崩れてしまう」という不安から、挑戦を避けるようになる。一方で努力を褒められた子どもは、難しい課題こそ成長のチャンスだと捉えられる。この実験結果は、部下や子どもへの声かけ一つで、相手のマインドセットを硬直させも、しなやかにもしてしまうという、恐ろしくも希望のある事実を教えてくれます。

以前ご紹介した「挑戦し続けた人たち」との共通点
この「しなやかマインドセット」という考え方は、以前このブログでご紹介した「カーネル・サンダースの挑戦」にも通じるものがあります。1000回を超える断りを受けても挑戦をやめなかったサンダース氏の姿勢は、まさに「失敗を自分の限界ではなく、まだ成功に出会っていないだけ」と捉える、しなやかマインドセットそのものだったと言えるでしょう。本書を読むと、そうした偉人たちの生き方の背景にある心理的なメカニズムを、より深く理解できます。
こんな人におすすめ
- 新しい挑戦の前で、つい「自分には無理かも」と感じてしまう方
- 部下や子どもの成長を、どう後押しすればいいか悩んでいる方
- 失敗との向き合い方を見直したい方
- 人を褒める時の言葉選びに、科学的な根拠を持ちたい方
ビジネスパーソンから教育関係者、子育て中の方まで、幅広い立場の人に学びのある一冊です。気になる項目が一つでもあった方は、ぜひ本書を手にとってみてください。

まとめ
「大切なのは、今どんな人間であるかではなく、これからどんな人間になろうとするかである」
『マインドセット』は、「才能があるかどうか」ではなく「どう考えるか」が、成長や成功を左右するということを教えてくれる一冊です。世界中で読み継がれ、教育・ビジネス・スポーツなど幅広い分野に影響を与え続けてきたその理由が、読み終える頃にはきっと納得できるはずです。新しい挑戦に尻込みしてしまう時こそ、ぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか。
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